パーキンソン病の患者さんがお薬が内服できない時は?

パーキンソン病のお薬を突然中断することは大変に危険です。体全体がかたまってしまって全く動けなくなり、高熱を発して時に致命的になります。ですから、何があっても、パーキンソン病のお薬がゼロになることだけは、避けなければなりません。

何らかの原因で意識障害を生じたり、飲み込む能力が低下したり、腸閉そくを生じたりしてお口から食べ物を摂ることが出来なくなった時や、胃や腸の外科手術をして、しばらくの間経口薬の内服が出来なくなった時は、必ず主治医に相談してください。パーキンソン病のお薬には、注射や貼付薬もあります。急に内服が出来なくなった時には、レボドパの注射を行います。この注射は、必ず静脈注射で行ってもらってください。点滴に混ぜたりすると、濃度が低すぎて脳には入らず、効果がありません。パーキンソン病の専門家でないお医者さんの中には、この事を知らずに点滴でレボドパを入れたりする方がおられますので、その点を必ず確認してください。

内服困難な時期が続くことが予想されたり、消化管の手術などが予定されているような場合は、内服薬を貼付薬に切り替えておきます。ドパミン作動薬のロチゴチンを、ニュープロ®という貼り薬で使用します。嚥下障害が高度の場合には、胃瘻を造って、ここから管で栄養を与えることがしばしばなされますが、この場合には、内服薬を容易に入れることが出来ます。ただし、薬局でお薬を砕いて(粉砕と言います)もらっておく必要があります。

稀なことですが、急にオフ状態になってお薬の内服が出来ないような場合には、アポモルヒネ(アポカイン®)の皮下注射を行うという方法があります。ただしこれは、病院でしかできません。自宅で使う可能性のある場合には、予め病院の担当医師と相談して置いて下さい。

めったにないことだとは思いますが、数十年前の私の個人的な経験をご紹介しましょう。あるパーキンソン病の患者さんで、毎日の内服薬の管理を全面的に奥様がなさっておられたのですが、ある日、その奥様が交通事故に遭われて救急病院に搬送され、お子様たちもそちらの病院に駆けつけられたために、患者さんは丸一日お一人で自宅に置いておかれました。奥様の状態が落ち着いたので、自宅に戻られたご家族が発見されたのは、自宅の廊下でうつむきに倒れたまま動けないでいる患者さんでした。定時に服用するお薬を飲まなかったために、動けなくなっていたのです。お薬が切れていたので、転んでしまい、一晩中転んだままの姿勢でおられたとのことでした。すぐに私の許に搬送されたので、一命を取り留められましたが、本当に危機一髪でした。

岩田 誠