禁煙外来

担当医師:岩田晶子

ご案内

喫煙者には肺癌のみならず多くの癌との因果関係は周知の事と思いますが、ヘビースモーカーでも癌を発症しない人はいます。
しかし血管の動脈硬化と肺構造の末端が壊れていく慢性閉塞性肺疾患という病態は喫煙の量と喫煙年数の積(ブリックマン指数)に比例して喫煙者の全ての人に生じる身体の変化です。

煙草に含まれるニコチンは神経毒性をもつ物質で、末梢血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があります。
また一酸化炭素は、タバコが不完全燃焼する時に発生する物質で、血液中では酸素よりも先にヘモグロビンと結合します。
そのため身体が酸素不足状態になり、活動量が低下し、疲れやすくなります。また、血液中のコレステロールを酸化させ、動脈硬化を促進する作用があります。

(BBC News2001.9.27より引用)

この写真は向かって右が非喫煙者、左は18年間喫煙歴のある喫煙者で40歳の一卵性双子です。見た目の変化も一目瞭然です。

禁煙することは

  • ① 癌の予防
  • ② 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など)や脳卒中などの血管の病気の予防
  • ③ 慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器の病気の予防
  • ④ 見た目の老化の予防

に繋がります。今すぐ禁煙!

保険診療の適応条件

初回診察時に、健康保険等で治療が可能かどうか、喫煙状況などをお聞きします。
禁煙治療に健康保険を適応とするためには、以下の4点の要件を満たすことが必要です。

① ニコチン依存症のスクリーニングテスト (Tobacco Dependence Screener) で5点以上
テストはこちら → ニコチン依存症のチェック
② ブリンクマン指数 (Brinkman index)[1日の喫煙本数×喫煙年数]≧200
③ 直ちに禁煙することを希望し、禁煙治療を受けることを文書により同意していること
④ 初めて禁煙治療を受ける、もしくは前回の禁煙治療から1年経過していること

※平成28年4月から、35歳未満の人は、②ブリンクマン指数の要件がなくなり、喫煙本数、喫煙年数に関係なく、保険で禁煙治療を受けることができるようになりました。

若い方はなるべく早めに禁煙することをお勧めいたします!

禁煙外来の実際

禁煙外来は、12週間、全5回診察を受けていただきます。
現在の主な治療方法は内服薬バレニクリン(チャンピックス)と受診時の禁煙アドバイスです。

2008年に国内で発売されたバレニクリン(チャンピックス)はニコチンを含まない内服薬でタバコを吸いたい気持ちを軽くし、タバコの快感を減らす効果があります。
同薬剤を用いての禁煙加療はこれまでの禁煙成功率の3倍と言われています。
また禁煙状況に応じたアドバイス全5回の禁煙治療をすべて受けた方の約8割の方が禁煙に成功しています。
(*参考:中央社会保険医療協議会 ニコチン依存症管理料算定保険医療機関における禁煙成功率の実態調査報告書)

当クリニックでは12週間の治療期間中はもとより薬物治療終了後も患者様の心の依存のサポートをさせて頂きながら禁煙成功のお手伝いを致します。
費用は3割負担での保険の場合、3ヶ月の診察費と薬剤費の自己負担額は2万円弱になります。

受動喫煙の怖さ

受動喫煙というのは、他人のタバコの煙を吸わされてしまうことです。
タバコの先から立ちのぼる副流煙には、喫煙者が吸い込む主流煙よりも多くの有害物質(半数近くは発がん性物質)が含まれている事が知られています。
受動喫煙の影響として、だれもがまず思い浮かべるのは肺がんかと思います。
国立がん研究センターによりますと、肺腺癌のリスクは2倍以上にもなることが報告されています。

癌の発症には、15年~20年もの長い年月がかかります。
そのため受動喫煙の影響がはっきりしていても、あまり緊急性を感じないため、予防対策も遅れがちですが、もっと短期間で発生する病気に気管支炎や喘息があります。
タバコの副流煙には、PM2.5という微小の有害物質が大量に含まれています。
とくに子供や高齢者は影響を受けやすいので、受動喫煙を避ける必要があります。
また日頃から受動喫煙にさらされると収縮期血圧が4mmHg上昇することがわかっています。

血圧の上昇は心臓や血管の負担になり脳卒中や冠動脈疾患の発症につながります。
その他にも糖尿病、メタボリックシンドローム、精神疾患(うつ・うつ状態)、認知症、化学物質過敏症なども受動喫煙が関与していると言われています。
禁煙を決意するきっかけとしてご自身の身体の事だけではなく大切なご家族の為にという動機はとても高いモチベーションになります。
また禁煙成功のためには医療の力だけではなく周りのサポートもとても重要です。一緒に頑張りましょう。