更年期障害のホルモン治療

2010年6月11日〜13日 日本抗加齢学会が開かれました。
今回は更年期障害をテーマにしたセッションに参加して参りました。
『何歳までエストロゲン療法の適応があるか』をテーマに太田博昭先生がお話された内容をご紹介します。

閉経後、平均10年ほどで人生を終えていた時代には性ホルモンについて問題とならなかったが、長寿になった現在閉経(55歳)から平均寿命(85歳)まで30年間もの間エストロゲン欠乏の状況下で生きていかなければならなくなった。
現代の中高年女性にはエストロゲン欠乏により様々な健康寿命の障害となる問題(骨粗鬆症の発症、コレステロール値の上昇、動脈硬化、心血管系疾患等)が生じている。
エストロゲン値は55歳の時点で男性よりも少なくなり60歳になると男性の半分量になってしまう。
ホットフラッシュ等のいわゆる更年期障害の対処だけでなく疾病予防にとってエストロゲンによる効果大きさを強調され、結論『65歳まではエストロゲンを使用してもよいのではないか』とのご発表でした。
 
定年も60歳から65歳に引き上げられ更に70歳でもまだまだ元気に社会貢献できる人が増えている現状と合わせて考えても非生理的という意見もあるかもしれませんが、ホルモンを補充しつつ元気で過ごせる時期を延ばしていく事は社会的に有益な事だと思います。
しかし何歳で閉経を迎えたか、自覚症状の有無、個々人の遺伝的リスク、その他の疾病の有無、閉経時の社会的背景で何歳までの補充がベストかは微妙に異なるのではないでしょうか (太田先生も暦年齢だけで治療適応線を引くことは困難とおっしゃっていました)。
またホルモン補充療法にも数種類がありますので取捨選択は慎重にならなければなりません。
次回のコラムではエストロゲン作用を示すエクオールについてご紹介します。

岩田 晶子