高コレステロール血症(脂質代謝異常症)

私は2009年9月までの約4年間、検診センターで週に1回勤務していました。
同施設でもメタボの診断基準のひとつである腹囲を2年前から測ることになったのですが、腹囲が正常範囲内である割合は想像以上に少ないことに驚きました。
ご想像通り、腹囲が正常値を超えた方の多くはコレステロール値も総じて高めです。
中には少々肥満体型でも血液検査の結果はすべて正常値の方もいらっしゃいますが、そんな方に私は「ダイエットせずにこのままですと来年はコレステロール値が上昇し再来年には高血圧になってしますよ」と呪いのような(脅しのような)言葉を思わずかけてしまいます。
4年間勤務していたので、その患者さんが呪い通りに年々検診結果で異常値が少しずつ増えていく様子も目の当たりにすることになります。
この時、問題意識をきちんと持ってくださる方とまだ大丈夫だろうと楽観視される方とではその10年後に大きな差が出てくるのではないかと思います。
コレステロール値の考え方もこの数年変化してきており、最近では善玉コレステロールが大変注目されています。
LDL-C/HDL-C比という言葉をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
簡単に言うと悪玉コレステロール (LDL-c)が善玉コレステロール (HDL-c)の何倍になるかということです。
LDL-C/HDL-C比が2.5を超えると、プラーク占拠率(動脈硬化率)が上昇します。
また、糖尿病を併発している場合には1.3、高血圧を併発している場合には1.4の段階から動脈硬化が進展すると言われています。
LDL-C/HDL-C比が2.0以下ではプラークの退縮が認められているという報告があります。
実数を入れてみますと善玉が60であれば悪玉は120以下がいいということで、善玉が40と低めの方では悪玉は80くらいまでにした方がいいことになります。
更年期以降の女性の多くがエストロゲンホルモンの低下によりコレステロールが上昇傾向になります。
少々高くても薬は内服せずに食生活や運動療法で経過をみるという選択肢をとる場合もありますが、ここでもLDL/HDL比は治療をするかどうかの一つの基準になります。
コレステロールが正常上限程度でも先に述べましたように心臓病(狭心症、心筋梗塞など)や糖尿病の合併のある患者様には抗コレステロール剤を内服して頂くことがあります。
検診センターでは5分程の結果説明で、即加療の必要がない限りそれっきりでになってしまいます。
けれどもそこでもっと時間をかけて生活習慣病にならないために今どうすればいいのか、原因の発見、具体的な目標設定や方法をお話しする時間がもっとあればといつも思っていました。
本来、それは一度きりでなく経過を共有していく事が理想的な予防診療で上手く機能すれば抗コレステロール剤を内服しなくても済むと思います。

岩田 晶子