「しびれ」の意味

患者さんの訴えの中で、「しびれ」ほど色々な意味を持つ言葉はありません。
Aさんの訴える「しびれ」と、Bさんのいう「しびれ」は、内容的には全く違っているのが普通です。
ですから、自分が使っている「しびれ」という言葉の正確な意味を、よく理解して医師に伝えないと、誤解を生んでしまい、誤診や時間と労力の無駄に繋がってしまうことが少なくありません。
ここでは、日常的によく使われる「しびれ」の意味について考えてみましょう。
「しびれ」で表現される自覚症状で一番多いのは、手足や体のどこかが、ビリビリ、ピリピリ、あるいはジンジンしているというもので、学術用語では「異常感覚」といわれるものです。
通常は、黙ってじっとしていても「しびれる」もののことをこう言いますが、場合によっては、黙ってじっとしていれば何も感じないのに、軽く触ったすると、感電したときのように「ビリン」とするような「しびれ」もあります。
このようなものは、専門用語では「錯感覚」と言われます。
これに対し、感覚が全くなくなったり、弱くなったりして、触ったりつっついたりしても感じないというような「感覚鈍麻」も、「しびれ」と表現されますし、手足や舌の麻痺を生じてこれらを思うように動かせなくなったときにも、手足や舌が「しびれた」と表現される方が珍しくありません。
最近では少なくなりましたが、以前は、「失神」や「立ちくらみで」意識がごく短時間途絶えるような場合にも、「しびれ」と表現されることがありました。
このような具合ですから、ご自分の「しびれ」を医師に告げられるときには、その「しびれ」の内容を正確に伝えるようにしてください。
なにも難しい専門用語を使う必要はありません。
「右手の親指と人差し指の先が、いつもビリビリしています」とか、「左手の小指側が、触ってもつっついても何も感じないのです」とか、両手の指先に何かが触ると、感電したように「ビリッ」とくるんです、といった具合にお話していただけばよいのです。
あなたの症状が正確に伝わりませんと、誤診の元となったり、診断に大変時間がかかってしまったりしてしまいます。
このようなことが起こらぬよう、自分の症状を医師に正確に伝えることは、あなた自身が迅速で正しい診断を得るために極めて大切なのです。
「しびれ」に限らず、自覚症状を医師に正確に伝えることは、あなた自身のために必要なのです。

岩田 誠