「しびれ」の原因

じっとしていてもビリビリするような「しびれ」が、片側の手と口の周りに急に現れた場合には、大脳の内部の。
視床という場所に出血や梗塞を起こした可能性があります。
脳の病気では、ビリビリするような異常感覚がまれではありませんが、原則として体の片側だけに生じます。
両手、あるいは両足に異常感覚が出るようならば、脳の病気の可能性は殆どありません。
また、大脳皮質の感覚領域に腫瘍があったりしますと、何も前触れなく突然右足の先からビリビリしてきて、これが次第に腿まで広がっていく、というようなてんかん発作としての異常感覚が、腫瘍のある側と反対側の大脳を焦点として、繰り返し起こることがあります。
時にはこのあとビリビリを感じた部分にけいれんが始まり、全身痙攣にまで拡大していくことさえあります。
一方、数分程度で消えてしまうようなビリビリや、感覚鈍麻が、手や顔の片側に生じた場合に忘れてならないのは、一過性脳虚血発作です。
これは脳梗塞の前触れですから、ほうっておかずに、神経内科医の診察を受けてください。
片方の手、あるいは片方の足のみに現れるビリビリする異常感覚は、脳の病気だけでなく、末梢神経の病気で起こることもあります。
ビリビリが、手の親指と人差し指の先だけだったら手根管症候群が、手の小指側全体でしたら頸椎症による頸神経根圧迫が、太ももの前面からやや外側にかけてのビリビリなら、異常感覚性大腿神経痛が考えられます。
両手あるいは片手の感覚が急に鈍くなり、筋力は正常なのに手に持ったものを取り落としたりするような症状が、若い方で急に生じたら、多発性硬化症などの脊髄の病気が考えられます。
このような病気では、両側の下肢の感覚が鈍くなることもあります。
これらの症状とともに、膀胱に尿が溜まる感じ(尿意)がなくなったり、あるいは尿意を生じても排尿することが出来なくなったりしたら、脊髄の病気を考えなければなりません。
両足の先のほうや、両側の足底がビリビリ、ジンジンと痛むというような症状は、末梢神経障害でもっとも良く見られます。
このような場合に詳細に診察しますと、下肢の感覚鈍麻、特に音叉を足首などに当てて調べる振動の感覚の鈍麻が見られます。
このような末梢神経障害は、実に様々な原因で生じますが、糖尿病性末梢神経障害はもっとも多いものの一つです。
このほか、抗がん薬、あるいは抗結核薬の使用、シンナーやボンドなどに含まれる有機溶媒中毒などでも生じます。
どんな内容の「しびれ」であっても、脳、脊髄、末梢神経のどの場所の病気で起こった症状なのかをまず診断する必要があります。
そのためには、詳しい神経内科の診察が必要です。
末梢神経障害による「しびれ」であると判断されれば、脳の画像検査などという高価な検査を行う必要はありません。
十分な診察もせずにすぐ脳のMRIをとるような事は、絶対にあってはならないことです。

岩田 誠