神経内科の診療の中で、「めまい」という言葉ほど、使う人によって意味が違っている言葉はありません。
十人十色といいますが、「めまい」を訴える人が十人いるなら、本当に十通りの異なった「めまい」があると思わなくてはなりません。
そして、それぞれの「めまい」は全く異なった病気の症状であることが多いのです。
ですから、「めまい」のことで神経内科を受診されるのでしたら、あなたの「めまい」が一体どのような「めまい」なのかを、正確に医師に伝える必要があります。
そうでないと、診断を誤ってしまうことがとても多いのです。
単に「めまい」がします、と伝えるのではなく、その内容を説明しなくてはなりません。
その時、何も専門用語を使われる必要はありません。
あなた自身の言葉で、以下に示すどれなのかを、正確に説明なさってください。
まず、周囲のものがグルグル回って見えるような「めまい」があります。
また、周囲が回って見えるのではないが、自分がグルグル回っているような感じがするような「めまい」もあります。
これらのような「めまい」を感じられたら、どちら向きに回って見えるのか、あるいは回っているように感じるのかを記憶しておいていただくと大変参考になります。
回転する感じはないけれど、体がグラグラと揺れて不安定に感じられるような「めまい」もあります。
あるいは、雲の上を歩いているようにフワフワとした感じの「めまい」もあります。
「めまい」と表現される症状として多いものの一つに、フワーッとした気絶感や、立ちくらみ、あるいは突然生じる失神のように、意識がやや薄れる感じを生じるものがあります。
場合によっては、そのために床や道路に倒れてしまうこともあります。
これらは要注意の「めまい」です。
足の感覚が鈍くなって人では、立ったり歩いたりする時に平衡を保つことが難しくなり、立ったり歩いたりすると体がふらついたり、よろけたりすることがありますが、このようなよろよろした状態を「めまい」と表現される方も少なくありません。
病気によっては、見ているものが揺れて見えるようなことがあります。
多いのは、見ているものが上下に動いて見えるものですが、このような現象も、多くの場合は「めまい」という言葉によって表現されています。
また、見えるものがチカチカ、あるいはギラギラとまぶしく光って見えるような症状を持つ方もおられます。
このような症状も、しばしば「めまい」という言葉で表現されます。
このように「めまい」という言葉で表現される症状の内容は実に様々で、実際にどんな「めまい」なのかをよく確かめませんと、その「めまい」の原因にたどり着くことはできません。
「めまい」で受診される時には、ここに述べたことを参考にしていただいて、あなたの「めまい」が一体どんな「めまい」なのかを、医師に対してできるだけ正確にお伝え下さい。
それが正しい診断に至る近道なのです。
岩田 誠