グラグラ「めまい」とフワフワ「めまい」

体がグラグラと揺れるように感じられたり、フワフワと雲の上を歩くように感じられたりといった「めまい」を訴えられる患者さんも少なくありません。
専門的には「浮動性めまい」と呼ばれますが、用語にとらわれず感じられたことを正確に述べていただくのがよいのです。
これらの「めまい」の原因は実に様々で、前庭や脳幹、小脳の病気でも生じますし、大脳の病気で生じることもあります。
特に、頸動脈やそこから分かれ出ているような、大脳を養っている大きな動脈が細くなっていたり詰まっていたりしますと、こいのような「めまい」を生じることがあります。
その原因のほとんどは動脈硬化による動脈の狭窄ですから、高血圧、肥満、糖尿病、高脂血症などがおありの方で、このような「めまい」が生じるようなら、神経内科医を受信される必要があります。
このような「めまい」、あるいは回転性の「めまい」が発作的に生じ、短時間で消えてしまったような場合、よく「一過性脳虚血発作」という診断名が告げられることがありますが、「めまい」だけでこのような診断を下すのは誤りです。
「一過性脳虚血発作」というのは、脳の一部分の血流が途絶えたため脳梗塞になりかけたが、脳梗塞にまで至らない間に血流が再開したため、症状は一時的に出ただけで消えたものを言います。
「めまい」だけでは脳の一部分の血流が途絶えた証拠にはなりませんので、「一過性脳虚血発作」とは呼ばないのです。
「めまい」と一緒に、呂律が回らない、ものが二つに見える、よろけて歩けない、顔や手足の片側の感覚がなくなった、あるいは半身不随になった、というような他の症状が出た場合には、脳の一部分の障害があったと考えられますので、「一過性脳虚血発作」と呼ばれます。
「一過性脳虚血発作」は、脳梗塞の前触れです。
症状が消えたからといって安心せずに、できるだけ早く神経内科を受診しましょう。
フワフワ「めまい」の原因として多いのは、血圧が低下したり、貧血があったり、あるいは不整脈があったりして、脳に行く血液の循環が悪くなる病態です。
不整脈の一種で徐脈発作を生じる方で、しょっちゅうこのような「めまい」を起こしていた方が、ペースメーカーを入れたら、すっかり「めまい」がなくなったというような方は、珍しくありません。
「めまい」の原因は、本当にいろいろなのです。

岩田 誠