フワーッと気が遠くなる「めまい」

長い時間椅子に座っていた後で急に立ち上がったときなどに、突然フワーッと気が遠くなるような経験をお持ちの方は少なくないでしょう。
このような現象は「立ちくらみ」と呼ばれ、やせ気味の若い女性では頻繁にみられます。
座位から立ち上がると、体中の血液が、重力の作用で一挙に下半身に流れ込もうとします。
このままですと脳など心臓より上の部分に送られる血液は極端に減ってしまい、循環が途絶えて意識が無くなってしまいます。
そこで、こんな時には、下肢の血管が直ちにギュッと収縮する反応が起こり、血液が下半身に流れ込んでくるのを防ぎます。
この反応を受け持っているのは交感神経という自律神経です。
交感神経の素早い反応があればこそ、私たちは座位から立ち上がっても意識を失わないでいられるのです。
しかし、このような反応を実現してくれる交感神経の働きが弱かったり、反応の早さが遅くなったりすると、血管収縮反応が間に合わず、立ちくらんだり、気絶してしまったりします。
こういった現象は「起立性低血圧」と呼ばれ、フワーッと気が遠くなる「めまい」の原因になります。
起立性低血圧の原因は様々です。
血圧を下げる薬や、うつ病の薬、パーキンソン病の薬などによるものは大変多いですし、糖尿病の末梢神経障害では、頻繁に起立性低血圧がみられます。
また、たくさん汗をかいているのに水分補給を怠って脱水したりしても起こります。
最近、我が国で問題になっているのは、食後低血圧による起立性低血圧です。
ご飯やうどんのような炭水化物を食べて30分から1時間ほど後、腸から炭水化物が吸収され始めますと、しばしば血圧が下がります。
特に高齢者ではこの傾向が強く、4−5人に1人は炭水化物を食べた後に血圧が下がると言われています。
そんな時に立ち上がりますと、起立性低血圧を起こして倒れたり、フワーッと気が遠くなったりすることがあります。
タンパク質や脂肪の多い食事ではこのようなことは起こりません。
ですから、お昼にご飯やうどんをお食べになったら、食後30分から1時間くらいは立って歩いたりせず、座ったままか、横になっていた方がよいのです。
食後に寝転んでいても、牛にはなりませんからご心配なく。
若い人たちの中には、特別の病気がなくても、長時間立ったままでいると血圧が下がって、気絶してしまう人が少なくありません。
よく朝礼で倒れたりする子供がいますが、このような状態は「起立性調節障害」と呼ばれており、交感神経の働きが不十分なために起こると考えられています。
不整脈、とくに発作性心房細動や、発作性徐脈、発作性頻脈もまた、前回述べたようなフワフワ「めまい」だけでなく、フワーッと気が遠くなる「めまい」の原因となることが少なくありません。このような発作性不整脈は、ホルター心電図でもなかなかつかまらないことがあります。
私個人の経験でも、発作性心房細動を疑ってホルター心電図を2回行っても発作が起こらず、3度目の検査でやっとつかまえることができたということがありました。

岩田 誠