片頭痛と「めまい」

片頭痛もちの方は、実に様々な「めまい」を起こします。
それには、頭痛発作の前兆として生じる「めまい」、頭痛発作の最中に生じる「めまい」、それから頭痛発作のない間欠期に生じる「めまい」、そして片頭痛もちの方に合併する内耳の病気や脳梗塞による「めまい」が分けられます。
前兆としてグルグル回る回転性の「めまい」、耳鳴り、呂律が回らない、物が二つにだぶって見える、両眼の視力障害、歩行不安定などを生じる片頭痛発作は、脳底型片頭痛と呼ばれ、若い女性に多く見られます。
時には、意識混濁を伴うようなこともあります。
これに対し、前兆を伴わないで頭痛だけが起きる片頭痛発作では、グルグル回る「めまい」は普通見られませんが、眩しくて、目が開いていられなくなるようなギラギラ「めまい」が起こることが稀ではありませんし、フワーッと気が遠くなるような「めまい」や、グラグラして不安定になるような「めまい」を生じることもあります。
片頭痛もちの方では、ギラギラ「めまい」が、頭痛のない時でも起こることがあります。
外界が異常に眩しく感じられたり、縞模様や格子縞の模様を見るとグラグラッとする「めまい」を覚えたりすることがあるのです。
このようなことを避けるため、普段からいつもサングラスをかけていないと生活できないという方も居られます。
片頭痛もちの方には、子供の頃から車酔いや船酔いに苦しんだ方が多いことが知られています。
小学校の頃、遠足などでバス旅行をすると、きまって車酔いにかかってしまった、というような方が、思春期をすぎると片頭痛発作を生じるようになることが少なくありません。
また、片頭痛もちの方は、しばしば、良性発作性頭位性めまいのような内耳性の「めまい」を併発します。
このような病態は、片頭痛の共存症と呼ばれていますが、どのような機序で関連しているのかは判っていません。
片頭痛患者では、片頭痛発作のない一般人に比べて、脳梗塞を起こす確率が高いことが知られています。
その頻度は、片頭痛のない人の数倍程度です。
片頭痛もちの方に生じる脳梗塞は、主として小脳や下部脳幹に生じ、小さい梗塞が多いと言われています。
これらの場所に生じる脳梗塞では、発症時にグルグル「めまい」や、グラグラ「めまい」を、しばしば生じます。
片頭痛とは全く関係なく、「めまい」と頭痛が生じることもあります。
それは、欧米人に比べて日本人に多い、椎骨動脈解離です。
動脈の壁の内側が破壊されたため、それによって出来た動脈壁の裂け目の中に、内側から血液が流れ込み、動脈壁の裂け目をどんどん大きくしてしまうのが、動脈解離という現象です。
頚椎の作る骨のトンネルを通って頭蓋内に達する椎骨動脈の解離は、日本人では珍しくないのですが、欧米人では滅多に見られません。
椎骨動脈解離は、後頭部の強い痛みと回転性「めまい」で始まることが多く、頸部外傷によるむち打ち損傷や、頸部の不自然な姿勢などが、その誘発因子となることが知られています。

岩田 誠