子供の片頭痛

片頭痛は子供にも生じます。
ただ、片頭痛は自覚症状が主となりますから、自分の症状を明確に述べることが出来ない幼児では、片頭痛発作を見つけることが容易ではありません。
学齢期になれば、頭痛や吐き気といった症状もはっきりと伝えられますので、見つかりやすくなります。
こうした問題がありますので、片頭痛が何歳ぐらいから起こるのかを正確に知ることは難しいのですが、私の個人的な経験の中での最年少の片頭痛患者さんは、5歳から発作があったようです。
一般的には、小学校に入学して以後、2-3年生くらいから発作が現れることがあります。
片頭痛はもともと女性に多い病気なのですが、この年齢の患者さんは、男の子のほうが多いようです。
女の子の場合には発作があらわれるのはこれよりやや遅く、初潮を迎える前後から発作が始まることが多いようです。
子供の片頭痛発作では、しばしば頭痛そのものの訴えがはっきりせず、「きもちがわるい」といってぐったりし、しばしば嘔吐してしまったり、「おなかがいたいの」と訴えたりすることが少なくありません。
このような症状は、昔はよく自家中毒と呼ばれていましたが、今日では、周期性嘔吐症と呼ばれています。
これも、広い意味では、片頭痛発作の一つの現われなのです。
ですから、そのような訴えは数時間で自然に消えて、いつものように全く元気になります。
ですから、このようなお子さんが朝から発作を起こして学校に行けなくなってしまっても、お昼になれば元気になって跳ね回りますので、親御さんは「学校嫌い」になったのじゃないかと思われますし、授業中にこのような発作が生じて保健室で寝ていますと、下校時には元気が戻りますので、先生方も「学校嫌い」なんじゃないかと思ってしまいます。
でも、そのようなお子さんには、片頭痛発作があるかもしれないのです。
もちろん、お子さんでも、大人と同じような紛れもない片頭痛発作を生じることは、珍しくはありません。
片頭痛発作を持っている子供の中には、車酔いがひどく、バスでの遠足などに行けない事が、少なくありません。
片頭痛の患者さんでは、様々な感覚が過敏になっていることが多いのですが、体の回転や傾きを感知する内耳の三半規管の感度が良すぎると、このような車酔いが出やすいと考えられています。
成人の片頭痛患者さんに、子供の頃車酔いはありませんでしたか、と伺いますと、車酔いがひどくて、遠足にはいつも行けませんでした、とおっしゃる方が、意外に多く経験されます。
片頭痛という病気によるものと理解されなかったために、「学校嫌い」だけではなく「遠足嫌い」のレッテルまで貼られて、一人悲しい思いをされた方が、片頭痛患者さんの中には沢山おられるのです。
子供の片頭痛でも、トリプタン製剤は使用できます。
ただ、年齢に応じて、量の調節が必要です。
また、吐き気止めのお薬や、乗り物酔いに対する酔い止め薬の使用は大変有効です。
何よりもまず、的確な診断を受けることが重要です。
子供の片頭痛を理解するためには、片頭痛で起こるのは頭痛だけではない、ということを知っておいて頂きたいと思います。

岩田 誠