脳を鍛えよう

私たちの脳では、生まれた時からベータアミロイドというゴミがたまり続けている。
年月が経ちゴミが一杯になると、ゴミに埋もれた神経細胞が死んでゆく。
それが、アルツハイマー病という病気である。今のところ、脳にたまったゴミを取り除く方法も、ゴミがたまらないようにする方法も見つかっていないから、アルツハイマー病は、治すことも予防することもできない。
しかし、アルツハイマー病で神経細胞が減ってきても、脳を鍛えておけば、認知症という状態には陥らない強い脳を作ることができる。
脳を鍛える、それは表現する活動を絶やさないことである。若い頃から豊かな表現力を養ってきた人の脳は、少々神経細胞が減ったくらいではびくともしない。
逆に、表現能力を鍛えていない人は、神経細胞が少しでも減ると、たちまち認知症になってしまう。従って、若い頃から表現力を高める習慣をつけておくことは、認知症発症予防のために極めて重要である。
表現行動と言っても、なにも特別なことをするわけではない。
習字、絵画、塗り絵、折り紙、貼り絵、編み物や刺繍、裁縫、園芸。手紙や日記、あるいは俳句や短歌もいいだろうし、音楽、ダンスもいいだろう。これと反対に、じっと座ってテレビを見続けるとか、テレビゲームに熱中するとか、自己表現のない世界に没頭していたのでは、脳は鍛えられない。鍛えられていない脳は、たまったゴミに埋れて簡単に働きをやめてしまうのである。

岩田 誠
(婦人の友社刊『明日の友』200号、2012年10-11月より)