女性の片頭痛に関してよく問題となるのは、妊娠時のお薬の使い方です。
妊娠されると、半分ほどの方では発作回数が減り、発作も軽くなることが多いのですが、それでも発作の起こることはあります。
そんな時、お薬を使っても、おなかの中の赤ちゃんには影響がないのでしょうか、という質問をよくうかがいます。
実は、この問題に対する正確な答えは未だだされてはいません。
しかし、妊娠に気づかずにトリプタン製剤を使用してしまった妊婦さんは、世界中で膨大な数にのぼっていますが、今までのところ、流産や先天性奇形などの頻度は増えてはいないことは、はっきりとわかっています。
ですから、妊娠中にうっかりトリプタン製剤を使用してしまわれたとしても、取り返しのないことをしたと悩まれる必要は全くありません。
ただ、妊娠が判明したら、毎日服用しなくてはならない予防薬はやめたほうが良いでしょう。
また、発作時には、胎児への害がないことが判明しているアセトアミノフェン(市販名カロナール)を使用するようにしましょう。
もう一つの問題は出産後です。
お産が終わってほっとされた後には、発作が増えることが少なくありません。
そんな時、母乳で赤ちゃんを育てるとなると、飲んでいるお薬の成分が、赤ちゃんの体内に入っていくことになります。
従って、毎日飲まれる予防薬は、赤ちゃんに母乳を飲ませている間は避けてください。
トリプタンを頓服で使用した場合には、まずお薬を使う前に十分搾乳してその分を保存しておきます。
そしてお薬を使用してから8時間後にもう一度搾乳してその分は捨て、その後に溜まったお乳だけをお使いになれば安全です。
ただ、母乳をあげている間は、片頭痛発作が妊娠前より減るといわれています。
人工栄養で赤ちゃんを育てられる場合には、予防薬の使用にも、トリプタン製剤の使用にも制限はありません。
岩田 誠